また、通風や採光、プライバシーの確保、開口部の位置や大きさ、種類には、特に注意を払いながらデザインしている。食事室上部のドームは、夏場の自然換気を呼び起こし建物内部に風の流れを発生させ、屋根につけられたトップライトは、増築によって暗くなった既存部分へ気持ちの良い光をもたらす。土や漆喰、半付、木による内装は湿度を十二分に調節し、かつ空気を浄化してくれている。
Sさん一家は、冷たいコンクリートや新建材に囲まれて庭のない環境で子どもたちを育てたくないとSさんご夫婦が考え、施主夫人の両親の家を一部増改築して新居とすることになった。 設計するにあたり、この住宅の最も環境の良い部分、すなわち南側に張り出して増築した部分を台所兼食事室とした。家族の生活の中でともに食事を作り、皆で一緒に食べ、語らい、また人をもてなすことこそ最も大切な「核」であると考えたからである。そして玄関は形式張ったものではなく、食事室とほぼ一体となって開かれている。子どもたちがより開かれた多様なつきあいを通 して、成長してゆくこと。家が孤立したものでないことを大切に考えたからである。

西荻窪 S邸

照明器具は全て光風林の手作りである。またこの住宅での新しい試みは、あらゆるドアの取手・ハンドルを木でつくったことである。金属は手に冷たいが、木は手に暖かい。偉大な木工家、サム・マルーフ、ウォルトン・エシュリックの仕事から光風林がヒントを得て試みたものである。外部駐車場のブロック敷き、柴植え込みは夫人と光風林の合作。完成後、子どもが「ぼくの家は土と木と紙でできている」と作文に書いた。